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  • 執筆者の写真Yoshihiro Sakagami

元関西大学中等部高等部 教諭  宮本 裕美子 先生

更新日:2023年6月4日


元関西大学中等部高等部 教諭  宮本 裕美子 先生 エデュテクノロジー ケーススタディ

 関西大学は、“学の実化(がくのじつげ)”を学是としてきました。


これは、学んだことを実際の社会に活かせ、ということです。


その中で、学んで楽しい、気付いたら勉強している、といった子供たちが主体的になれる授業を目指しております。


 

 教育のICT化に関しましては、私の前任者から、単に紙をICTに置き換えるのではなく、子供たちの想像力や発想力など、様々な力を引き出すためにテクノロジーをどのように使えば良いか、を考えてきました。


実験レポートなどはもちろん、何かを表現したり、モノをつくったりするときにICT機器を使う機会が多く、例えば、DNAからタンパク質ができる流れを視覚的に表すためのストップモーションビデオの作成を授業に取り入れています。


 また、環境問題について相手にどう伝えるかという授業では、ICTを活用しポスターやスライドショーを作成したり、絵を描いたりということにも挑戦しました。

VRを使った授業では、細胞の中に入ってミトコンドリアの動きを体感的に理解したり、熱帯多雨林が燃えている状況を体験したり、実際にその場に居る感覚になって学ぶことができました。生徒が学習内容に興味を持ってくれる、そのような仕掛けを用意できることが大きなメリットと言えると思います。


 教育のICT化に関しては“馴染ませる”ということが重要で、生徒も教員も押し付けられると抵抗を感じてしまうので、教育現場にいかにスムーズに浸透させるかが肝だと思います。


また授業時間にかかわらず、教材をいつでもどこでも配れるというような便利さは大きなポイントで、今回の新型コロナウィルス感染症による休校などの状況下においては更にICTが深く根付いたと実感しています。




 学校によってはMDM(Mobile Device Management)を入れて管理を厳しくするケースもあります。ですが、私たちは利用していません。


それは、教員が生徒たちを管理できないのではという不安から来るもの、あるいは親御さんの不安を解消するためのもの、と見受けられます。


私たちは、生徒たちが社会に出た時の自己管理能力は学校で身に付けるべきだ、と考えております。


教員が管理を行うと、生徒たちは同時に管理からいかに逃げるか?という変な能力も育ってしまいます。よって、「管理しない」ということが、イコール生徒の能力を伸ばすことに繋がる、というアドバイスをコンサルから頂きました。


 


 コンサルのディスカッションでは「こうした方がいい」ではなく、「先生たちは何がしたいんですか?」ということを常に問い続けてくれます。


私たちがやりたい事を引き出してくれるのです。


コンサルタントが学校を動かすわけではありません。現場の教員たちがどうしたいのかで築き上げていくものがあるので、そのゴールに向かってブレないように修正してくれています。

常に主体を私たちに持ってきてくれるのが特徴だと思います。


5年前からご協力頂いておりますが、短いタームでは劇的な変化というのは分かりづらいですが、方向性がブレないため、5年経って教育のICT化が大きく進んだと実感しています。


 


 教育現場では、教員同士で切磋琢磨することも多く、テクノロジーを使うのはどうですかなど授業のことに口出しをすると、大きな反発を受けることもあります。


なので、敢えて外部のコンサルにお話をしてもらっています。専門家の助言であると教員たちも素直に受け入れやすいと思います。


阪上さんは全国を廻っていますし、社会の眼から見て教育がどうであるべきか?という視点を広く深くお持ちなので、専門家として安心してお任せできます。


 


 また、普段学校に居ては分からないような外部の情報提供をして頂いております。


具体的には毎月一度の定例会にて、最初に“阪上さんタイム”を設けて、例えば、休校時の学校の取り組みがテーマであれば教育センターや注目校の取り組みなどを紹介して頂いています。


その後に教育のICT化における現状と課題などのディスカッションに入るのですが、教頭もメンバーに入っているので、この定例会は学校全体の方向性を決める上で重要な会の一つとなっています。


校内ネットワークの構築など細かい話をしていると、必ずブレが生じるのですが、「いやいやそっちじゃないでしょ、やりたかった方向はこういう事ですよね」というように客観的な立場から適切なアドバイスをして頂いています。


私たちがブレないように支えて頂いているという感じです。




 阪上さんは何かすごく特別なことをおっしゃるというよりは、いつも見えない核心の部分を付いてくるという印象があります。


2015年頃、私が最初にお付き合いさせて頂いた時にお話されていたことが印象的なのですが、当時、生徒一人に一台タブレットを導入するにあたり、教員たちから「タブレットでゲームするんじゃないか」など不安がる意見も出ました。


その時、阪上さんが教員たちに向かって「皆さん、生徒は普通にゲームもします、授業中に悪いこともします。それは当たり前です。でも、その上でどうするかを決めるのが現場なんです。なんでそんなところで怖がっているんですか?」ということをお話されて、本当にその通りだと思いました。


ゲームするかもしれない、どうしよう、ではなくて、不安を受け入れた上で、どういうアクションを起こすのかが重要だということに気付かされました。


私たちが見落としている重要なものを常に見据えてアドバイスしてくださいます。




ICT化を推進する立場にいる私たちが他の教員たちに対して生徒の創造性を伸ばす術などを話す時に、私たちが自信を持っていないと聞いている教員たちも不安になるかと思います。


私たちが論理立てて自信を持って説明できるために、今後もサポートして頂きたいと思っております。

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