【PISA2025のポイント】3分野すべてOECD加盟国中1位、一方で低得点層の割合は3分野とも上昇 順位と分布の両方から読む

📌 この記事の要点
・日本は調査開始以降初めて、科学コンピテンシー・読解力・数学的リテラシーの3分野す
べてでOECD加盟国中1位となりました。
・平均得点は3分野とも前回より低い数値です(科学547→538点、読解力516→503点、数学536→525点)。有意な低下は読解力のみです。
・OECD平均は読解力と数学で有意に低下しました。OECDは、3分野ともPISA史上最も低
いOECD平均だったとしています。
・習熟度レベル1以下の割合は3分野すべてで有意に上昇し、レベル5以上の割合に有意な変
化はありませんでした。
・読解力では下位10%の得点が387→360点と有意に低下し、上位10%は636→631点で横ばいでした。
・社会経済文化的背景(ESCS)による得点差はOECD平均より小さく、OECDは日本を、
成績と公正性を両立する7つの教育システムの一つに挙げています。
文部科学省・国立教育政策研究所は令和8年9月8日、「OECD生徒の学習到達度調査
(PISA2025)のポイント」を公表しました。同じ日にOECDも報告書「PISA 2025 Results(Volume I)」と、国・地域ごとのカントリーノートを公開しています。
この記事では、2つの機関から発表された内容をもとに、PISA2025の結果を見ていきます。学校現場・教育委員会の皆様が、今後の施策等を検討する材料になれば幸いです。
1. 全体像 91か国・地域、約76万人が参加

【図:「OECD生徒の学習到達度調査 PISA2025のポイント」 2ページ「PISA2025について」より】
PISA(生徒の学習到達度調査)は、義務教育修了段階の15歳の生徒が持つ知識や技能を、実生活の課題にどの程度活用できるかを測る国際調査です。
【PISA2025の概要】
91か国・地域から約76万人が参加。日本からは、全国の高等学校等の1年生のうち抽出された183校、約6,500人が参加しました。(2025年6月から8月に実施)
2025年調査からオンラインによるコンピュータ使用型調査(CBT)に移行しました。
中心分野の名称が「科学的リテラシー」から「科学コンピテンシー」に改称されました。知識や理解にとどまらず「何ができるか」という行動面に焦点を当てる趣旨と説明されています。
革新分野として、ラーニング・イン・デジタルワールド(LDW)が初めて実施されました。(今回の公表は「コンピュテーショナルな問題解決能力」の部分のみ。全体は2027年に公表予定)
2. 平均得点と順位 3分野とも1位、有意に低下したのは読解力

【図:「OECD生徒の学習到達度調査 PISA2025のポイント」5ページ「PISA平均得点及び順位の推移」より】
【調査結果のポイント】
科学コンピテンシー:538点(前回547点)/OECD加盟国中1位・全参加国・地域中5位
読解力:503点(前回516点)/OECD加盟国中1位・全参加国・地域中4位
数学的リテラシー:525点(前回536点)/OECD加盟国中1位・全参加国・地域中5位
ラーニング・イン・デジタルワールド:557点/OECD加盟国中1位・全参加国・地域中4位
平均得点は3分野とも前回より低い数値です。ただし、統計的に有意な低下は読解力(13点)のみで、科学と数学は「低下したが有意差なし」と整理されています。
OECD加盟国中の順位は、2022年調査の時点で科学1位、数学1位、読解力2位でした。今回動いたのは読解力の順位です。
OECD平均は、読解力が15点、数学が9点、それぞれ有意に低下しました。OECDの報告書は、3分野すべてでこれまでのPISAで最も低いOECD平均を記録したと記しています。
長期の推移について、国立教育政策研究所は「2015年以降、OECD平均は平均得点が低下しているが、日本は横ばい(平均得点のトレンドに有意な変化がない)」と整理しています。
3. 習熟度レベル別の分布 レベル1以下の割合は3分野で上昇


【図:「OECD生徒の学習到達度調査 PISA2025のポイント」10ページ・20ページ「習熟度レベル別の生徒の割合(経年変化)」より】
【習熟度レベル別に見た変化(2022年→2025年)】

3分野すべてでレベル1以下(低得点層)の割合が有意に上昇し、レベル5(高得点層)以上の割合には有意な変化がありませんでした。OECD平均では、読解力と数学で低得点層の割合が有意に上昇し、高得点層の割合は有意に低下しています。日本との違いは高得点層の動きです。
PISAではレベル2が基礎的な習熟度レベルとされています。科学であれば、科学的知識と証拠を使って身近な現象を説明し、単純なデータを解釈できる水準です。
科学でレベル1以下の割合が15%以下だった国・地域は7つ(北京・上海・江蘇・浙江、マカオ、シンガポール、エストニア、日本、台湾、韓国)で、日本はその一つです。一方でOECDのカントリーノートは、2022年から2025年にかけて上位10%と下位10%の得点差が3分野のいずれでも広がったと記しています。
4. 読解力 下位10%の得点が有意に低下

【図:「OECD生徒の学習到達度調査 PISA2025のポイント」18ページ「上位層と下位層の格差」より】
【上位層と下位層の変化(2022年→2025年)】
90パーセンタイル(上位10%の位置)の得点は636点→631点で、有意差はありません。(OECD平均は606点→593点と有意に低下)
10パーセンタイル(下位10%の位置)の得点は387点→360点と、有意に低下しました。(OECD平均も343点→327点と有意に低下)
両者の差は249点→272点と有意に拡大しました。(OECD平均も263点→266点と有意に拡大)
設問のタイプ別に見ると、「読みの流ちょう性(速く正確に読む)」の設問は、日本もOECD平均も正答率が有意に低下しました。一方、「評価し、熟考する」に関する設問の正答率は、日本では有意に上昇しています(OECD平均は有意に低下)。比較的長い課題文や複数の課題文がある設問、「情報を探し出す」「理解する」に関する設問は前回と同程度でした(OECD平均はいずれも有意に低下)。
国立教育政策研究所は、「読みの流ちょう性」の正答率低下が日本の平均得点低下に影響している可能性があると述べています。OECD平均の低下については、OECDが単一の原因ではなく複数の要因が重なった結果である可能性を指摘しています。
5. 社会経済文化的背景 得点差はOECD平均より小さい

【図:「OECD生徒の学習到達度調査 PISA2025のポイント」24ページ「生徒の社会経済文化的背景と科
学得点」より】
【背景と結果のポイント】
科学の平均得点は、社会経済文化的背景(ESCS)が最も低い25%の群で504点、最も高い25%の群で575点、差は71点でした。OECD平均の85点(446点/531点)より有意に小さい水準です。
ESCSが科学の得点のばらつきを説明する割合は7.6%で、OECD平均の11.6%を下回ります。2022年調査でも同じ傾向が確認されており、国立教育政策研究所は「一貫して社会経済的公正性が高い」と整理しています。
OECDの報告書は、成績と公正性を両立する教育システムとして、北京・上海・江蘇・浙江、カナダ、エストニア、アイルランド、日本、韓国、マカオの7つを挙げています。条件は、レベル2以上の生徒が75%超、ESCSの説明力が10%未満、成績がOECD平均超の3つです。
6. 両機関の総括と、文部科学省が示した施策
国立教育政策研究所の資料は、日本の結果を「3分野すべてで国際的に高い水準を維持し、一貫して社会経済的公正性が高い。一方、低得点層の割合の上昇といった課題も見られた」とまとめています。あわせて、OECDが生徒の学びについて、学習への関与(好奇心、忍耐力、自己調整)、学校や家庭からの支援、安全で公正な学習環境なども含めて多面的に捉えることの重要性を示唆している、と紹介しています。
順位は3分野とも1位でした。一方で、レベル1以下の割合は3分野で上昇しています。同時に、レベル5以上の割合と社会経済的公正性は前回と同じ水準にあります。今回の結果は、その水準が「全員に行き渡っているか」を問い直すものでした。順位という見出しの下にある分布の変化に着目し、子どもたち一人ひとりを丁寧にみとり、ICT機器も活用しながら個別最適な学びのさらなる充実を推進することがより一層求められるでしょう。
✍️執筆者

阪上 吉宏(株式会社エデュテクノロジー 代表取締役)
IT企業を経て、2007年に Apple に入社。教育部門の立ち上げメンバーとして多くの教育機関の一人一台導入に関わる。世界中の授業を見てきた経験を日本に還元すべく、2014年に株式会社エデュテクノロジーを創業。
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