【2030年改訂】次期学習指導要領のポイントと教育DX・AIがもたらす「余白」審議まとめ案のポイントとスケジュール、各教科の改訂要点、特別支援教育までを確認

2026年(令和8年)9月25日、文部科学省の中央教育審議会(中教審)教育課程部会 教育課程企画特別部会の第18回会合が開かれ、配付資料として『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ(案)』(資料1)が公表されました(以下「審議まとめ案」)。会合では審議まとめ案が大筋で了承され、教育課程部会に送られました。今後は10月のパブリックコメントなどを経て文部科学大臣に答申され、今年度中に新しい学習指導要領として改訂される予定です。
審議まとめ案は、文部科学省から中教審への諮問を受け、論点整理や各教科・領域のワーキンググループでの検討を経て取りまとめられたもので、4分冊で構成されています。第1部・第2部を収めた1/4、第3部(1)の2/4、第3部(2)の3/4、第3部(3)の4/4のほか、参考資料として「OECD生徒の学習到達度調査 PISA2025のポイント」「教育課程柔軟化サキドリ研究校事業に係る国としての取組について」などが配付されています(第18回配付資料ページ)。
また、9月1日に公表された「令和9年度教育課程関係概算要求主要事項」では、学校DX・AXやクラウド環境、セキュリティ対策などを含めた予算の拡充が示されています。
審議まとめ案は、デジタル学習基盤や生成AIが日常的に存在する社会を前提に書かれています。本記事では、審議まとめ案のポイントとスケジュール、各教科の改訂要点、特別支援教育までを確認していきます。
1. 【3つの方向性】次期学習指導要領の検討の基盤となる考え方
今回の改訂検討の出発点は、文部科学省から中教審への諮問です。諮問では、不確実性が高く変化の激しい社会の中で、子供たちが「自らの人生を舵取りすることができる民主的で持続可能な社会の創り手」となるよう、学校教育の在り方について検討が求められました。
これを受けて特別部会は、次期学習指導要領の検討の基盤となる「3つの方向性」を示しました。
① 「主体的・対話的で深い学び」の実装
「主体的・対話的で深い学び」を、経験豊かな教師のノウハウにとどめず、すべての学校で実装することを目指します。そのために、学習指導要領そのものを「構造化・表形式化・デジタル化」し、教師が授業づくりに生かしやすいものにします。審議まとめ案の第1部では、AIがどのような質問にも応じる時代に人間が知識を持つ意義を改めて整理し、「深い学び」を支える「確かな知識」の習得を重視すると述べています。
② 多様性の包摂
不登校児童生徒(令和6年度で約35万人、過去最多)や障害・認知特性のある子供、外国人児童生徒など、子供たちの多様性は格段に顕在化しています。子供の実態や課題に応じた教育課程・学習指導を可能にすることで、すべての子供を包摂し、「好き」を育み「得意」を伸ばす教育課程を目指します。審議まとめ案は、多様な子供たち同士の対話や協働が「深い学び」を駆動させる契機になるという、①と②の関係にも触れています。
③ 実現可能性の確保
①と②の実現・両立は容易ではなく、教育課程の実施に伴う負担への指摘に向き合う必要があります。そこで、教師と子供に教育課程上の「余白(多様な子供たちの深い学びを実現するための時間的余裕)」を創出することを重視します。具体策として、調整授業時数制度、高等学校の単位制の大幅な柔軟化、特別の教育課程の新設・拡充、デジタル学習基盤の活用などが挙げられています。
このほか審議まとめ案では、次の点も第1部に位置づけられています。
「多面的・多角的な考察」を教育課程全体で重視 特定の事柄を強調し過ぎたり、一面的な見解を十分な配慮なく取り上げたりするなどの偏った取扱いにより、児童生徒が多面的・多角的に考察したり、事実を客観的に捉え、公正に判断したりすることを妨げることのないよう留意する、と記されています。
PISA2025の結果を反映 習熟度の低い生徒の割合の増加、学習に積極的に関与(好奇心、忍耐力、自己調整)している生徒の割合が低いこと、社会経済文化的背景(ESCS)の水準が低いほど習熟度の低い生徒の割合が高いことを課題として挙げています。
「学級全体のウェルビーイング」の実現 学級経営を通じて、子供同士の人間関係や教師と子供の信頼関係を醸成することを、特別活動や総則の改善と関連づけています。

2. 【調整授業時数】次期学習指導要領が創り出す「余白(裁量的な時間)」
新しい領域や教科ができれば授業時数が増えるのではないか、という学校現場の懸念に対し、審議まとめ案は次の考え方を示しています。
標準総授業時数は現行を維持 小学校高学年や中学校の1015コマを増やしません。
新教科・領域の時数は「広く薄く」確保 小学校3年以上で標準授業時数が35コマを超える各教科等から、一律で3〜4%程度の時数を減じて確保します。道徳、特別活動、外国語活動など35コマ以下の教科等からは減じません。各教科の具体的な時数は今後精査されます。
内容の精選 「統合的な理解・総合的な発揮」に基づいて各教科の内容を精選し、教科書の精選にもつなげます。
そのうえで、学校の判断で時数を柔軟に調整できるよう、義務教育段階に「調整授業時数制度」を創設します。
調整授業時数制度の基本的な枠組み
各教科等の授業時数を、標準授業時数の最大15%程度の範囲で下回ることができる制度です。すべての対象教科等で上限まで下回った場合、小学校で138コマ程度、中学校で128コマ程度(週4コマ程度)になります。これは小学校5年生、中学校2年生について現行の標準授業時数を基に試算した参考値です。
生み出した「調整授業時数」は、学校の判断で次のように使えます。
「裁量的な時間」としての活用 全体で週2コマ(最大70コマ)程度が上限です。
学習枠 苦手教科の学び直しや、マイ探究の課題の深掘り、効果的な学習方略の指導など、各教科等に該当しない教育プログラムに充てます。
研究・研修等枠 教材研究・授業研究や、学校が企画する研修など、教育の質の向上に直結する組織的な取組に充てます。週1コマ程度が上限です。
既存教科への上乗せ、学校独自の教科の新設
令和9年度にサキドリ研究校を大幅に増やし、令和10年度から全国で先行実施を可能とする方向で検討されています。

先行事例と国の支援
制度を先取りして試行する「サキドリ研究校」は332校が指定され、先行研究開発学校68校と合わせて全国400校で実践が進んでいます。審議まとめ案は、先行校の中に、1コマ45分を40分に短縮するなどして調整授業時数を生み出し、教育の質の改善につなげている例があると記しています。
▼ 文部科学省のサポートマガジン『サキドリ』では、事例記事の第1回として北海道知内町立知内小学校の取組が紹介されています。
令和9年度は指定校の追加募集を行い、今年度末を目途に先行事例集を公表する予定です(参考資料2)。
3. 【小学校】総合的な探究の時間に「情報の領域」を新設
小学校の「総合的な学習の時間」は「総合的な探究の時間」となり、「探究の領域」と「情報の領域」の2つの領域で構成されます。それぞれ別に標準授業時数を設定します。
審議まとめ案は、現行の学習指導要領では情報活用能力に関する指導内容が不足しており、学校間の取組状況にも差があると指摘しています。「情報の領域」で情報活用能力を集中的・体系的に育成することで、各教科等における端末の活用方法や、プログラミング、タイピングなどの内容を精選できるとしています。
「情報の領域」の3つの内容項目
情報技術の活用 タイピングの基本、クラウドを活用した協働、情報の整理やプレゼンテーション
情報技術の適切な取扱い 情報セキュリティ、個人情報の保護、情報モラルや基本的なメディアリテラシー
情報技術の特性の理解 AIの仕組みの体験、プログラミングやコンピュータの基本原理
指導計画では、探究のプロセスに位置づけて情報活用能力を学びながら活用する小単元「ミニ探究ユニット」と、探究のプロセスに位置づけることが難しい基礎的な内容を学ぶ「情報ブロック」を組み合わせます。たとえば1学期に「情報の領域」を集中的に配置し、育成した情報活用能力を探究の基盤として生かす、といった工夫例が示される予定です。
授業時数 小学校3・4年生は各学年最大30コマ程度、5・6年生は各学年最大35コマ程度

4. 【中学校】新教科「情報・技術科」の創設
中学校では、家庭科を独立の教科としたうえで、現行の技術分野については適切な時数を確保して「情報・技術科」(仮称)とします。審議まとめ案は、現行の「技術・家庭科」は家庭分野と技術分野で指導者や免許が異なるのに評定を1つの教科として記載しており、そのデメリットが大きいと述べています。また、現行の技術分野で情報を扱うのは4つの内容のうちの1つにとどまっています。
「情報・技術科」の2つの領域
「情報技術」領域
「情報の表現とデジタル化」「プログラミングと自動化」「情報基盤とシステム化」の3つの内容項目で、情報技術が機能する構造を段階的・統合的に学びます。
「情報を基盤とした生産技術」領域
材料と加工、生物育成、エネルギー変換といった生産に関わる技術を、情報技術を基盤として扱います。「材料加工とデジタル製作」「生物育成とデータ活用」「エネルギー変換とスマート化」の3つの内容項目に加え、それらを横断的・統合的に扱う「技術の統合」を設けます。
領域名と内容項目名はいずれも仮称です。
授業時数
中学校1・2年生は各学年最大70コマ程度、3年生は最大35コマ程度(現行の技術・家庭科の技術領域に含まれる内容を含む標準授業時数)。現行の技術・家庭科は各学年70・70・35コマなので、技術分野をそのおおむね半分とみれば約2倍になります。

5. 【高等学校】「情報Ⅱ」の充実と単位制の柔軟化
高校の情報科は、必履修の「情報Ⅰ」を存置し、その基礎の上に選択科目「情報Ⅱ」を置く考え方を維持します。小・中学校で整理した内容の系統性を踏まえ、両科目の内容を充実させます。審議まとめ案は、数理・データサイエンス・AI教育やデジタルスキル標準との接続も踏まえ、高校卒業までに文理を問わず「情報技術の特性の理解」の育成を一層重視するとしています(1/4 p.241)。
「情報Ⅱ」の内容項目は「社会課題とデータサイエンス」「コンテンツデザイン」「AI」「先端技術と情報システムデザイン」「PBLによる価値創造の実践」です(1/4 p.241)。標準単位数は4新単位(現行の2単位に相当)で、より発展的な課題解決や価値創造の実践に必要な場合に、追加で一定の単位数を配当する例を解説等で示すとしています(1/4 p.81 注3)。

単位制の大幅な柔軟化
1単位の計算方法を細分化
1単位の学習量を35コマから17コマにします。卒業に必要な単位数は74単位から148新単位、必履修科目の単位数は38単位から78新単位になります(1/4 p.80〜81)。
週当たり授業時数の標準(週30コマ)を示さない
卒業に必要な単位を修得できる範囲で、各学校が柔軟に週時程を編成できるようにします(1/4 p.41、p.50)。
履修免除と振替
社会的信頼性が確立している基準により、特定の必履修科目の内容を既に十分に修得していると判断できる生徒には、一定の要件の下、各学校や教育委員会の判断で当該科目の履修を免除し、他の科目の履修に代えることができる仕組みを設ける方向です(1/4 p.41、p.47)。
先行実施
単位制の柔軟化は令和11年度あるいは12年度に先行実施し、具体の年度は都道府県教育委員会の検討状況や、令和10年度から指定する「高校版サキドリ研究校」の取組の進展を踏まえて決定します(1/4 p.50)。

出典 文部科学省 【資料1】次期学習指導要領等に向けた審議まとめ(案)(2/4)※第3部(1)(PDF 9.4MB) P457「高等学校の教育課程の柔軟化の仕組みの方向性(イメージ)」

6. 【各教科】国語・数学・理科・外国語・芸術・体育の改訂要点
各教科の改善の方向性のうち、主なものを取り上げます。審議まとめ案では、国語・外国語・芸術などで教科ごとのAI活用の留意点が示されています。
国語科 高校の選択科目を再編、AI活用の留意点を明記
高校国語では、現行の「論理国語」「文学国語」の履修状況の偏りが課題とされていました。審議まとめ案は、論理的思考力と感性・情緒の両面を二項対立に陥らずバランスよく育成する観点から、選択科目を再編します。必履修科目は「現代の国語Ⅰ」「言語文化Ⅰ」(各4新単位、1新単位まで減単可)とし、大多数の生徒の履修を想定した選択科目として「現代の国語Ⅱ」「言語文化Ⅱ」(各8新単位)を新設します。さらに発展科目として「論説と批評」「対話と表現」「文学と創作」「古典と文化」(各4新単位)を設けます(1/4 p.79、2/4 p.536〜537)。

AI活用については、AIによる言語生成が可能な時代だからこそ、言葉の意味を理解し、自らの意思や考えを形成・表現する人間ならではの言語能力を育成する必要があると述べています。
そのうえで、AIが出力した内容も比較・吟味の対象であること、自ら考え、判断し、表現した内容を自らの言葉で説明し責任を持つことを基本に据えるとしました。要約など、単元で目標とする資質・能力の育成に直結する場面ではAIを慎重に使用し、思考・判断・表現の過程がAIに代替されないよう特段の留意が必要としています(1/4 p.139)。

算数・数学科 「数学ガイダンス」「社会を読み解く数学」を新設
高校では、必履修の数学Ⅰに、数学の学びの全体像や社会との関係を学ぶ「数学ガイダンス」と、数列・行列・統計・確率などのエッセンスや数理モデルの基本的な考え方を学ぶ「社会を読み解く数学」を新設します。これに伴い数学Ⅰの単位数は最大8新単位程度(現行3単位=6新単位から2新単位増)とします(1/4 p.80)。
一方で学習量が増えないよう、数学Ⅱは6新単位(現行4単位から3単位相当)に減らし、数学A・B・Cは区分をなくして内容を選択できる一つの新選択科目(2〜12新単位、名称は「数理活用」などを検討中)に整理します。新選択科目で「社会を読み解く数学」に相当する内容を扱う場合には、数学Ⅰから減単できることを明確にします(1/4 p.79〜81)。算数・数学は調整授業時数制度の対象教科に含まれます(2/4 p.455)。

理科 4つの分野で系統性を明確化、「科学ガイダンス」を新設
小・中・高等学校を通じた学問的系統性を明確にするため、学習内容を4つの「分野」(物理・化学・生物・地学)に分けて整理します。従来の4領域「エネルギー」「粒子」「生命」「地球」で育もうとしていた中核的な概念は、「統合的な理解・総合的な発揮」(いわゆる方向目標)の中で表現します。用語の理解や暗記・計算に偏るのではなく、科学的な探究により導かれる一般原理・法則やその魅力を理解できるようにするとしています(1/4 p.185)。中・高には、理科の学習と研究・社会とのつながり、科学的思考・方法の基本や研究倫理を学ぶ「科学ガイダンス」を新設します(1/4 p.183)。

外国語科 科目名を変更、AI活用の原則を明確化
高校外国語科では、5領域を総合的に扱う「英語コミュニケーション」を「英語コミュニケーション(総合)」に、話すことや書くことを中心に扱う「論理・表現」を発信力の強化を図る「英語コミュニケーション(発信)」に変更します。単位数は現行と同じです(1/4 p.79、p.81)。小・中学校では、国が複数のコーパスを参照して「基盤語彙リスト」を作成し、指導する語彙数の精選と教科書の語彙の難易度の平準化を図ります(1/4 p.282、4/4 p.855)。
AI活用については、外国語による人間同士のコミュニケーションを図る資質・能力が最終的な目標であり、AIを活用した会話練習などはそのための手段だとしています。家庭学習の課題についても、単純な英作文など、単にAI翻訳を提出すれば済むような出し方をしない、といった留意点が示されました(1/4 p.281)。

芸術 表現の過程を安易に生成AIに委ねない
デジタル学習基盤の活用には生成AIを含めるものの、表現する過程などを安易に生成AIに委ねることは適切ではないとし、人間ならではの感性や身体性を基盤とする創造的な表現を重視します(1/4 p.220)。
体育・保健体育科 「多様な楽しみ方」と生涯にわたる関わり
運動やスポーツへの関わり方を「多様な楽しみ方」(する、みる、支える、知る、集う、つながる)として整理します(1/4 p.266)。これまで「態度」とされていた要素(公正、協力、共生、健康・安全など)は、運動との関わり方に係る「知識及び技能」として構造化し、豊かなスポーツライフの設計・実現を基本的な考え方に据えます(1/4 p.268〜269)。指導内容が過度に積み上がらないよう、高2以上(最終段階)で示す技能は、現行の中3〜高1程度で示している程度を位置づけることを基本として、全体の系統性を検討します(1/4 p.271、3/4 p.833)。

7. 【特別支援教育・不登校・通級】「2階建て」による多様性の包摂
審議まとめ案は、学校として共通に編成する通常の教育課程を「1階」、個々の児童生徒の実態に応じた特別の教育課程(特例)を「2階」とする「2階建て」の仕組みで、多様な子供を複層的に包摂する方向を示しています。「2階」の特例の適用がある児童生徒も「1階」で他の児童生徒とともに学びやすくなるよう、全体として包摂性を高める制度設計とします。
① 特別支援教育 基礎的環境整備の充実と通級による指導の改善
通常の学級に在籍し、学習面又は行動面で著しい困難を示す児童生徒の割合は約8.8%(令和4年度調査)で、増加しています。
これまで個別の「合理的配慮」として提供されてきた支援(端末の読み上げ機能、教材やプリントのテキストデータの端末への配布、活動の流れや指示を明確に表示するルールの校内統一など)の中には、学級全体への環境整備として講じることで個別の対応が不要になるものがあります。審議まとめ案は、1人1台端末等のデジタル学習基盤の活用を、合理的配慮の前提となる「基礎的環境整備」の充実に不可欠なものと位置づけています。
通級による指導については、自立活動の指導を実施したうえで、困難さの状態に対する手立てとして特に必要がある場合に、特例的な措置として、各教科等の目標・内容の一部を障害の状態等を考慮したものに替えることを可能とします。設置者の定めるところにより実施します。

② 不登校児童生徒への支援 特別の教育課程(2階部分)の新設
校内外の教育支援センター等に通う不登校児童生徒を対象に、特別の教育課程の仕組みを新設します。審議まとめ案は、心身の状態が変化しやすく、学習に向かうこと自体が困難なケースが多いという実態を踏まえ、子供自身が学習目標の設定に関わり、工夫して学習を進め、振り返る中で「学びのサイクル」を実感し、学習意欲や自己肯定感を取り戻していけるようにすることが重要だとしています。あわせて、特定分野に特異な才能のある児童生徒についても特別の教育課程の仕組みを新設します。
「2階シート(仮称)」による指導計画の一体化
通級による指導、日本語指導、不登校支援など、「2階」の複数の特例が重複する児童生徒についても俯瞰的に支援できるよう、国が参考様式「2階シート(仮称)」を示します。児童生徒に関する情報を重複なく確認できる共通シートと、特例ごとの固有の事項を記載する個別シートで構成し、指導計画に加えて支援計画の機能も取り込むことが有意義とされています。校務支援システムとの連携や学校段階間の接続、転校時の引継ぎについては今後検討されます。

8. 【生成AIと学習評価】学習過程の省略を防ぐ評価の工夫
審議まとめ案は、情報技術への過度な依存や、必要な学習過程の省略(過度な認知的オフロード)を負の側面として挙げています(1/4 p.27、p.71)。ブラウザの検索結果の最上部にAIによる要約が表示される中、その内容を単純にコピー&ペーストして、十分な思考を働かせていない実態も指摘されています(1/4 p.128、p.145)。自身の思考を経ずにAIの出力をそのまま使うのではなく、書く・話すなどの「外化」によって自分なりの意味理解を構築することを重視します(1/4 p.27)。
学習評価では、必要な学習過程を経ていない成果物は通用しないような評価の工夫が喫緊の課題だとし、次の例を挙げています(1/4 p.25、p.158)。
口頭試問の要素を取り入れる 論述・レポート・口頭試問・プレゼンテーション・作品制作など、「学びの主体的な調整」が求められる評価課題を重視します。
端末でのテスト時にブラウザ閲覧等をできないようにする GIGA端末のアンケートソフトのテストモードなどを活用し、ブラウザ閲覧や活用ができない環境で、自らの考えを根拠をもって記述させます。

観点別評価の在り方も見直します。
「学びに向かう力、人間性等」は評価観点として存置しつつ、総合所見欄で教育課程全体を通じた「個人内評価」を行います。あわせて、「思考・判断・表現」の観点別評価の過程で、「学びに向かう力」の3要素(初発の思考や行動を起こす力・好奇心、学びの主体的な調整、他者との対話や協働)を特に見取ることができた場合に「〇」を付記する仕組みを検討します(1/4 p.62〜63)。教師が参考にできる教科ごとの「見取る姿」は改訂後速やかに国が検討し、小中学校については令和10年度末までに学校や教育委員会に周知するとしています(1/4 p.64)。

メディアリテラシーや情報モラルについては、小学校の「情報の領域」、中学校の「情報・技術科」をはじめ教育課程全体で重視します。クリティカル・シンキング、情報の真偽や偏りの吟味、判断の留保、デジタルの賢い使い方と距離の置き方などが挙げられています(2/4 p.404)。
9. 【スケジュール】次期学習指導要領はいつから?答申・告示と先行実施
答申・改訂 10月のパブリックコメントなどを経て文部科学大臣に答申し、今年度中に改訂する予定です。
全面実施 小学校は令和12年度(2030年度)、中学校は令和13年度(2031年度)。高等学校は令和9年度末に改訂し、令和14年度(2032年度)から年次進行で実施します。
新教科・領域の先行実施 全面実施を待たずに部分的な指導ができるよう、小学校は令和10年度から、中学校は令和11年度から段階的に経過措置を講じます。具体的な内容は今後検討されます。
調整授業時数制度 令和10年度からの先行実施期間から活用できるようにする方向です。
高校の単位制の柔軟化 令和11年度あるいは12年度に先行実施します。

国による条件整備
新教科・領域の先行実施に向けて、審議まとめ案は次の条件整備を挙げています。
令和8年度から、教師が授業でそのまま活用可能な授業動画を含めた学習者用教材を国が開発し、実践・検証を踏まえて随時アップデートする
新課程の授業実践のための研修コンテンツを、小学校は令和9年度末、中学校は令和10年度末までに作成・提供する
中学校技術科・高校情報科の免許状所有状況を改善するため、令和8年度から全国どこでも受講可能なオンラインの免許法認定講習を実施する
生成AIの利活用に関するガイドラインを令和8年度中に改定し、必要に応じて随時改定する
調整授業時数制度について「教育課程柔軟化アドバイザー(仮称)」を育成し、各教育委員会や学校が指導・助言を受けられるよう国が支援する
10. 【まとめ】情報教育に関わる2つのポイント
9月25日の第18回会合で公表され、大筋で了承された『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ(案)』は、デジタル学習基盤や生成AIが日常的に存在することを前提に、学習指導要領を教師が授業づくりに生かしやすい形に組み替え、子供と教師の双方に「余白」を創り出そうとするものです。情報教育に関わる立場から押さえておきたい点は次の2つです。
小・中・高を通じた情報教育の体系化と、全面実施を待たない先行実施
小学校3年以上の総合的な探究の時間に「情報の領域」(3・4年は各学年最大30コマ程度、5・6年は各学年最大35コマ程度)、中学校に「情報・技術科」(1・2年は各学年最大70コマ程度、3年は最大35コマ程度)を新設し、高校は情報Ⅰ・Ⅱの内容を充実させます。時数は各教科等から一律3〜4%程度を広く薄く減じて確保します。新教科・領域は小学校が令和10年度、中学校が令和11年度から段階的に先行実施され、授業動画を含む教材の開発(令和8年度から)、研修コンテンツの提供(小学校は令和9年度末、中学校は令和10年度末まで)、オンラインの免許法認定講習が並行して進みます。
生成AIを前提にした学びと評価への転換
AIの出力をそのまま使うことによる学習過程の省略を防ぐため、国語・外国語・芸術などで教科ごとのAI活用の留意点が示され、評価では口頭試問の要素や、端末でのテスト時にブラウザ閲覧をできなくする工夫が挙げられています。「思考・判断・表現」の過程で学びに向かう力を見取る「〇」の付記も検討され、教科ごとの「見取る姿」は小中学校で令和10年度末までに周知される予定です。メディアリテラシーや情報モラルは、情報の領域と情報・技術科を要としつつ、教育課程全体で育成します。
今後は10月のパブリックコメントを経て答申・改訂に進みます。情報の領域や情報・技術科をどの時期にどう始めるか、教科の授業でAIをどこまで使い、何を評価するかは、各学校・教育委員会が審議まとめ案を基に検討し始める段階に入っています。調整授業時数制度で生まれる研究・研修等枠は、その準備に充てられる時間でもあります。
✍️執筆者

阪上 吉宏(株式会社エデュテクノロジー 代表取締役)
IT企業を経て、2007年に Apple に入社。教育部門の立ち上げメンバーとして多くの教育機関の一人一台導入に関わる。世界中の授業を見てきた経験を日本に還元すべく、2014年に株式会社エデュテクノロジーを創業。
🤝 株式会社エデュテクノロジーの関連支援サービス
次期学習指導要領は、情報教育の体系化、生成AIを前提にした学びと評価、調整授業時数制度による教育課程の柔軟化と、学校と教育委員会が新たに設計しなければならない事項を多く含んでいます。株式会社エデュテクノロジーは、改訂の動向を踏まえた計画づくりから教職員研修、カリキュラム設計までを支援しています。
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