【AI教育特別インタビュー】聖光学院・髙木先生に聞く!英語授業 × 生成AIの「ちょうどいい」付き合い方とこれからの教師の役割
- ayakonakagawa
- 22 時間前
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教育現場でのICT活用、特に「生成AI」の波が押し寄せる中、「AIをどう授業に組み込めばいいの?」「生徒が丸写ししてしまうのでは?」と不安を抱える先生方も多いのではないでしょうか。
今回は、教育DXを推進する株式会社エデュテクノロジーが、聖光学院中学校高等学校の髙木俊輔教諭にお話を伺いました。髙木先生は、次期学習指導要領に向けた外国語ワーキンググループの委員を務められ、当社の研修講師としても大活躍されている「学習評価と生成AI活用のプロフェッショナル」です。
今回のインタビューでは主に外国語学習について伺いましたが、他教科の先生方にとっても示唆に富むお話をいただきました。他教科の先生方も是非ご一読ください。
AI時代における「教師の本当の役割」から、具体的なプロンプトのコツまで、現場目線のリアルで温かいアドバイスをたっぷりお届けします!
1. 教師、ALT、そしてAI。これからの「役割分担」とは?
エデュテクノロジー(以下、エデュ): 先生、本日はよろしくお願いします!早速ですが、現場の先生方から最もよく聞くお悩みが「AIができることが増えて、教師やALTの役割が分からなくなってきた」という声です。この点、どうお考えですか?
髙木先生(以下、髙木): よろしくお願いします。まず大前提として、教師とAIでは明確に役割が異なります。
AIは「24時間いつでも付き合ってくれる優秀な練習パートナー」としては最適ですが、現時点では学習者の背景や性格、今のモチベーションなど「学習者の文脈」を理解することはできません。
教師の役割: 生徒一人ひとりの文脈を理解し、目標を設定してモチベーションを高めること。学習全体をデザインし、生徒の様子を見取りながら適切にガイドすること。
AIの役割: 時と場所を問わない、無尽蔵の練習パートナー。
また、AIを使うと生徒への「フィードバックの量」が劇的に増えます。
しかし、生徒は必ずしもそれを正しく受け止められるわけではありません。だからこそ、AIのフィードバックを噛み砕き、生徒の理解を補助する「人間の教師」の存在が、今後ますます重要になってきます。
エデュ: なるほど!では、ALTの先生の役割はどう変化していくのでしょうか?
髙木: 最終的な目的が「人とのコミュニケーション」であることを考えると、ALTは単なる「英語の話し相手」ではなくなります。それぞれの文化的背景を持つ「Augmented Learning Partner(拡張された学習パートナー)」や「Cross-cultural Learning Facilitator(異文化理解の促進者)」として、生徒の学習に意味づけをしてくれる存在と捉えるほうが、AI時代のALTの役割をより正確に表しているのではないかと思っています。

2. 授業の「どこ」で「どう」使う?バランスの取り方
エデュ: AIを授業に導入するとなると、「今までのやり方を全否定されるのでは?」と身構えてしまう先生もいらっしゃいます。
髙木: それは大きな誤解です!今まで効果があった学習方法は、そのまま継続すべきです。僕は、AIは「時間的・人的コストのせいで今まで諦めていたことを実現する手段」だと考えています。
AIを導入したからといって、人間の学習速度が突然何倍にもなるわけではありません。また生成AIがネットワークの状況に依存する以上、AIありきの授業デザインはリスクが高いので、少なくともローカルで動かすことができない現在では「普通の授業」のスパイスのような形で活用するのが現実的ではないでしょうか。
エデュ: 具体的には、どの場面でどう使えば効果的ですか?
髙木: 授業の「前・中・後」で分けて考えるとイメージしやすいですよ。
【授業前】教師のパートナーとして
生徒の文脈に合わせた教材作成や、授業デザインの「壁打ち相手」として。
(データがあれば)生徒の弱点を分析し、授業プランニングに活かす。
【授業中】生徒の学習を深めるパートナーとして
生徒の理解を助ける「チューター」として。
個別フィードバックを送り、次の課題を設定する「コーチ」として。
ディベートの対戦相手などの「練習相手」として。
【授業後】学習の拡張とデータ分析
教師は、生徒の学習データを分析して次のステップを決定する。
生徒は、教師の専門外の分野でも、自分の興味に合わせてAIから知識を引き出し、学習を深める。
💡 髙木先生からのアドバイス: どの場面においても、主導権は人間の教師にあります。教師自身が「どんな目的でAIを使うのか」を明確に持っておくことが何より大切です。

3. 「丸写し問題」と「フィードバック」の壁を越える
エデュ: 生徒がAIを使っていると、ずっと質問し続けて脱線したり、AIの回答を丸写ししたりしないか心配です。
髙木: 生徒がAIとやり取りしている時、僕は二つの対応を使い分けています。 質問があまり上手ではなく、欲しい回答を得られていない時は即座に中断し、どんなプロンプトを入力すればよいのかについて指示を出します。逆に、学習を深める方向で質問が続いているときは「見守り」、困ったタイミングで話し合いに加わり、適切な方向へ導きます。
丸写しを防ぐのは、まさに「教師の腕の見せ所」ですね。僕は以下の2点に気をつけています。
授業デザインの工夫: 単に答えを出させるのではなく、「AIとの対話」自体が思考プロセスになるよう設計する。
プロンプトの工夫: AIに「答え」ではなく「ヒント」を出させる。例えば英作文の添削では、修正案をそのまま提示するのではなく、「誤りを指摘し、生徒自身に考えさせる発問をする」ようにAIに指示します。

エデュ: 生徒がAIのフィードバックをちゃんと理解できているか不安、という声もあります。
髙木: ここはこれからの教育の鍵となる「フィードバックリテラシー」の領域です。AIを使えばフィードバックの量は増えますが、生徒がそれを吸収(uptake)して学習を改善できるかは別問題です。これは英語学習に限ったものではなく、学習全般に言えることです。
今は、
①「フィードバックは自分を成長させるための情報だ」というマインドセットを整える
②教師と一緒に対話しながら「どう改善に繋げるか」を考える
③受けたフィードバックを記録して振り返る
この3つが最善手だと考えています。

4. 評価、プロンプト、そして今後の課題(著作権・個人情報)
エデュ: 評価(成績づけ)についてはどう工夫されていますか?AIが書いたものか生徒が書いたものか、見分けがつきにくいですよね。
髙木: 僕は課題設計の視点からアプローチしています。例えば、僕が高3生を教えるときには、「AIによる修正前」と「修正後」の答案を両方提出してもらいます。その上で個別の添削と対話を行い、意図を確認しながらフィードバックします。 総括的評価(成績をつける評価)でAIを使う場合は、AIに「質の高い評価基準(ルーブリック)」をあらかじめ読み込ませることが必須です。それでもブレは生じるので、あくまでAIは「参考」とし、最終判断は教師が行います。
エデュ: 先生のように思い通りのプロンプトを作るのが苦手な先生には、どんなアドバイスがありますか?
髙木: 生成AIは「自然言語」で対話できるのが強みです。ですから、自分で完璧なプロンプトを書こうとせず、AIにプロンプトを作ってもらうのが一番簡単です。
📝 プロンプト作成をAIに頼む魔法のテンプレート 「(目的)をしたいのだけど、(想定する動作)ができるようにプロンプトを書いて。ただし、(制約条件)で、想定される出力は(出力例)のようにして。」

慣れないうちは、「役割」「目的」「対象学年」「条件」「出力のイメージ」などを箇条書きでメモしてからAIに投げると良いですよ。 AIに「他に必要な情報があれば、どんな情報が必要かをリストアップして」とたずねるのもいいですね。
また、生徒に使わせる場合は、自由にプロンプトを打たせるとエラーが起きやすいので、あらかじめ用途を制限した「GPTs」や「Gem」を作って渡すのがおすすめです。
エデュ: 最後に、個人情報や著作権について教えてください。
髙木: 個人情報については、無料版だとAIの学習データとして使われてしまうことがあるので設定の変更が必要です。例えばGeminiの教育版や、Claudeはデフォルトで、学習されない設定になっているので、安全な環境を選ぶことも重要です。名前を入力する必要がある場合には仮名にするなどの指導もよいですね。
著作権については、現在非常に大きな問題です。AIが生成するものもそうですが、例えば教科書の英文をデータとして入力して良いのかなど、AI活用に関わる著作物の扱いについては現行の改正著作権法第35条では明確に示されていないので、適切・不適切なユースケースを示すことは早急に取り組むべきだと思います。

文化庁からは著作権侵害に関わる一般的な注意事項(類似性・依拠性)が示されており、OECDやUNESCOが「責任ある使用」について示しています。ただ、日本の学校文脈での活用については具体的な事例が示されていないので、学校現場の文脈に即した具体的なガイドラインがあると安心して使えますね。
エデュ: 髙木先生、本日は現場ですぐに活かせるリアルなお話をありがとうございました!
AIは決して教師を脅かすものではなく、教師の想いを形にするための「強力なパートナー」なのだと強く感じました。
【高木俊輔先生について】

神奈川県の私立中高にて教員として13年間勤務した後、渡豪し、教育評価について専門的に学ぶ。メルボルン大学教育学大学院修士課程教育評価専攻修了。現在は私立中高一貫校で教諭として働くかたわら、アセスメント・デザイナーとして教育評価についての研修や、企業の教育プログラムに関わる評価制度の監修などを行なっている。
文科省「AIの活用による英語教育強化事業」自治体アドバイザー、文科省中教審初等中等教育分科会教育課程部会「外国語WG」委員、Google for Education 認定トレーナーとしても活動中。共著書に『エンゲージメント×英語授業 「やる気」と「意欲」を引き出す授業のつくり方』(明治図書)。
私たちがお手伝いできること🤝
次期学習指導要領や文部科学省が掲げる「デジタル学習基盤を前提とした学び」や「働き方改革」を実現するためには、学校現場のDXが不可欠です。
私たちエデュテクノロジーでは、こうした日本の教育現場の実情を踏まえ、先生方が複雑な設定不要で生成AIを活用するための「AI教育導入サポート」をご用意しています。
本サービスは、単なるツールの提供ではなく、先生方の「伴走者」となることを目指しています。
教員主導の働き方改革: プロンプト作成から運用まで伴走し、校務を効率化。先生が子供たちと向き合う「豊かな時間」を創出します。
実践的な3ステップ導入: 基礎研修から実務への伴走支援、さらには生徒向けの探究学習サポートまで、現場の習熟度に合わせて確実に定着させます。
リスク管理と品質向上: 文科省ガイドラインに沿ったセキュリティ対策を徹底し、ハルシネーション(嘘)への対処法や、深い学びを促す活用を伝授します。
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